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長年写真を撮ってきたが、今回は撮影を楽しめた。
小川義文(写真家)

写真を撮ることを生業にして40年くらい生きてきましたが、今まではクライアントから依頼されて撮ることがほとんどでした。もちろん撮影費という大切なギャランティもいただいていきました。
しかし、今回はノーギャラで、自ら撮りたいと思った花を撮り始めた写真を1冊にまとめたのがこの写真集です。きっかけは家の中にいつも花があって、なんとなく自然の光の中で美しく咲いている花の姿が気になり始めたことです。家人が家の中に花を飾ることを習慣にしていたことが、いつの間にか自分にとっても日常の風景になっていてある瞬間にその風景が輝くことがあるということに気がつきました。
「何してんの?そんなところで」と言われながら、家の片隅で撮り続けた写真が、今回の被写体「5分で生けた小川流生け花」です。

5分で生けてコンデジで撮る。
しかも自宅で、照明機材は一切使わずに。

現代のデジタルカメラは飛躍的な進化を遂げ、誰でも相応の美しい写真が撮れるようになりました。実際にカメラの性能に任せて撮影すれば、見た目通りの色彩鮮やかな情景がカメラのモニターに再現されます。屋内で花や植物を美しく撮る場合、とても重要なのは「いまある光と影を最大限に生かして撮る」ということに尽きます。それは、写真、あるいはカメラを論理的に理解しコントロールすることとは違います。
大切なのは「光と影が織りなす美しい一瞬を見極めること」。それさえ心がけていれば、初心者でもいい写真を撮れるようになるはずです。そう、簡単に……。「あなたがつくる美しさ、あなたが撮る美しさ」。この写真集が、それを生み出すための教科書となることを祈って。

 

例えば玄関のちょっとしたスペースで。

簡単な撮影術を学べば、コンデジやミラーレス一眼でも美しい写真が簡単に撮れるようになります。私が考える「生け花」は、自然に咲いていたように飾りつけるだけではなく、「一枚の写真になったときの美しい瞬間を再現すること」を目的としています。被写体の主役である花の本質を理解するためには、花に触れることが大切です。

自分流に花を生ける。

生け花は「主役である花をいかにして生き生きと見せられるか」を考えます。でも、気軽に自己流で楽しむ生け花なら華道教室に通う必要もありません。私もまったく生け花の経験がありませんでした。自由にシンプルに5分程度で生けるのが私流です。

を選ぶ。

窓際の光を選ぶ。光がよく入る部屋であれば、それで十分です。午前中の西側の窓、午後の東側の窓は強い光が入らないので、淡く絵画的に撮る場合に適しています。花の質感を際立たせ、情緒的に表現したければ直射日光(逆光)が入る窓を使用してもいいでしょう。この経験を積み重ねていくと光を見極める目ができてきます。

コンデジでも写真集ができることに挑戦してみた。

タイトルにある「MOMENT OF TRUTH」は「真実の瞬間」という言葉になります。
写真家にとってのシャッターチャンスは、何百分の1秒という瞬間です。長年小川さんと撮影の現場で一緒に仕事をさせていただきましたが、この一瞬を逃さない、あるいはいつこんな写真を撮ったのだろうと思い続けていました。
しかし、今回はコンデジでストロボもなく、自宅で撮ったというので、写真はカメラなどの機材ではないことがよく分かりました。それは、光と影の一瞬の絡み合いを見逃さない「目」そのものだと。
それこそ写真家にとっての「真実の瞬間」なのではないかと思い、自然とこんなタイトルになりました。(宮崎)


自分たちで作りたいものを作る。

笹川寿一(アートディレクター)

編集という楽しい時間。

美しい写真がなくては写真集はできませんが、もうひとつ大切なのが編集という仕事です。写真全体を把握して、ページネーションを構成し、それぞれの写真の美しさを最大限に引き出すトリミング、そして判型を決めるデザイン、レイアウトなど一連のクリエイティブワークは、写真家がアートディレクター、デザイナーと一緒になって進めていきます。もちろんそう簡単に全体像が一致することはありません。何度かの構成のやり直し、写真のセレクト、トリミングの調整などを繰り返し、より美しいものへを昇華させていく仕事は、意外にも楽しい時間でもあるわけです。

ていねいに印刷することの大切さ。

そして仕上げが印刷になります。製版工程がデジタル化され、仕事はスピーディに進むようになりました。デジタルカメラで撮影した写真ファイルはRGBファイルのまま入稿できます。しかし、印刷を4色で刷るのか、特色を加えて6色に刷るのか、カラーとモノクロの色バランスはどうするのか?あるいは用紙はどれにするのかなどなど決めなくてはならないことがたくさんあります。そして本紙で色校正を確認し、本番印刷、そして製本で完成です。今回は印刷も製本もていねいに仕上げることで、見ていて気持ちのいい写真集に仕上がる予定です。

長年広告の仕事をしてくると、自分が何を作りたかったのか忘れかけてしまうことがあります。自分は何を作りたかったのか、何を表現したかったのか、そんな思いを抱きながら3人で東京の街を見直すことからスタートしました。
そんな中で小川さんが見せてくれたのが、花の写真でした。それはコンデジで撮ったにはあまりにもきれいで、しかも自宅で自然光だと聞いて、もしかしたらこれは新たな可能性かもしれない、と思い出しました。
日常の中にある風景でも、その多くを見逃してしまうことが多くあります。特に東京という街は情報が多すぎます。
でも、そんな洪水の中でも埋没せずに美しい一瞬を見逃さない目線こそ我々プロの役割ではないか。だったら、それを1冊にまとめてみようと、この写真集を作ることから我々のプロジェクトは始ります。これは始まりに過ぎません。これからの我々の活動にどうぞご期待ください。


まだやり残したことがある、そんな気がして。

宮崎秀雄(プロデューサー)

広告も出版の仕事の進め方が大きく変わってきました。若い世代の人たちは、自分たちのできることを無理をしない範囲でやりながら結構楽しんでいる、そんな風にずっと見てきていました。
しかも、ネットに代表されるような「手軽さ」という選択肢もたくさんあります。しかし、時代は変わっても、変わらずに求められるものはあるはずだ、そんな思いから「写真集」というもっともシンプルで実力を求められるスタイルで自費出版してみたかった。ネットで世界に情報発信はできるけど、数千円もする写真集を買ってくれる人が果たしてどのくらいいるのだろうか、そんなことも実験できればと思い、この活動は始まりました。